【フードデリバリー】は有りか無しか?

2022年9月23日

結論

専業とするのは△。やむを得ず、緊急時的、または副業やバイトの代替としての手段であれば〇。ただし手取り金額と所要時間に納得できる限りで。閑散期にはやりたく無い。

趣味、または運動しながらお金を稼げる、つまり楽しいと捉えられる限りは◎

好きな時間に働ける???

確かに好きな時間に稼働できる。アプリを起動しボタンを押せば稼働時間タイマーがスタートするからだ。なんならUberEats対応時間外の朝3時とかでも、稼「働」はできる。もちろんやる意味はない。これと同等程度の意味で稼げない時間帯に稼働する意義とは、その収益の少なさと同様に薄弱である。

シフト制のアルバイト・パートはある程度自由に働く時間を決められる一方で、思い立ったが吉日な如く、その気になってからと働いたり休んだりはできない。収益が最低時給を下回るリスクがあるとはいえ、フードデリバリー業の多くはコレができる。それは利点だ。間違いない。

落とし穴に注意すれば悪い話ではない

ただし、しっかり収益を上げる事ができる時期・時間帯はかなり限られる。ピークタイムや繁忙期がそれにあたる。

この時間帯や時期を除いてしまえば、経費云々に関わらず最低時給を下回るリスクが常に付きまとう。何より地蔵行為がとても心に刺さる。土日祝とピークタイム以外、特に閑散期は地蔵行為が必須化し、道路上にそびえ立つイケず石ならぬ、生ける石造としてヒンシュクを買う事が避けられない。

「好きな時間に」とか「スキマ時間に」とか、「これだけ稼げる」などを宣う情報が散乱しているが、では「経費を引いたら?」とか「税金は?」とか「実は稼げる時間が少ない」とか、リアルな情報を探すのは少々骨だ。この記事もそんなアゲアゲな宣伝文句記事の中にに埋もれるだろうから、「参考になるなぁ」と思った人がもし1人でも居れば幸いというものだ。

事業主の常識として「そんなん知ってるわ」と思う人も多いだろうが、配達員のほとんどは個人事業主初心者であり、ある程度の打算があったにせよ、自分のアイディアで開業した訳でもない。言ってしまえばアルバイト感覚が強い。何しろ業務自体はそれとほぼ変わらない。よって経費にあまり意識が向かなかったり、税金に無頓着だったりする人が多いのは当然の情勢と言える。むしろそういう人が喰いものにされているとさえ言い切れる。

よって趣味でやっているという人を除いては、「経費と税金に意識を向け、自身の所得を明確化する」という行為は決して悪趣味ではない。そしてその金額に納得して稼働する限りにおいては、お財布事情の観点からは全く悪い話ではない。

そういうのは以下記事でイロイロと書いた。フードデリバリーをやってみたく思う人は現状を知り、稼働中で収入に不安を感じている方には指標となるだろう。

専業としてのフードデリバリー

結論で専業としては△と書いたが、天井の低い収入以外にも理由はいくつかある。

  1. 個人事業主としてのリスクと仕事の面白味が見合ってない
  2. 将来的に就職する可能性があれば、その時にだいたい不利になる
  3. 溜まるスキルや経験が無い
  4. 不安定な収益を努力で修正する事が不可能

1.個人事業とは何かしらの目標や目的があって起業し、自らの努力と工夫、アイディアでもって運営する事を前提としている。自身の裁量権が広く、というかほとんどの場合自分しかいないので、その点が個人事業の面白味である。雇用保険/労災保険/福利厚生がなくとも突き進む原動力とは、そういう面白味があるからである。

対して同じ個人事業のフードデリバリーはといえば、自身の裁量権は稼働時間とちょっとした配達の心得くらいである。仕事内容はというと、会社勤めよりもパート・アルバイトが比較対象だろう。そのパート・アルバイトでさえ社会保険に加入できる日本において、その恩恵をかなぐり捨てて敢えて事業主へとジョブチェンジするには仕事に面白味が足りていない。収入もそれに見合うとは言い難い。

2.もしフードデリバリーに嫌気がさして就活する事になると、無職よりはマシ程度の履歴書になるだろう。どの職種に就くのであれ、今までの経験が何より重視されるためだ。完全に職業差別ではあるが、普通には働けない、つまり社会不適合との偏見を持たれる可能性も低くはない。結果としては同じ配送業でも未経験での応募しかできず、フードデリバリー以前の職歴も期間が空けば空くほどに意味を失くしブランク期となる。

3.溜まる経験値がほぼ無く、他職種でこの経験を活かす事がまず出来ないという点が要因だ。ほとんどの人に出来る職業だからこそ広まった仕事である、という事を考えればむしろ当然でもある。よってその期間に他に何をしていたかがより重要になり、将来的な転職を考えた場合はむしろ他職種よりもしんどい生活を送る可能性が高い。例えば他事業の足しにする為に、だったり、資格やスキルアップを目指した勉強、音楽活動をする為だっていい。次の職に繋がる過程が最低限求められ、それは目で見える成果でなければならない。

他の雇われ職種では経歴そのものが成果となるため、この事情は明らかなデメリットである。経歴としてみればコンビニバイトの方が数段上に他人からは評価されるだろう。

4.収益は完全に委託元のUberEatsや出前館等にコントロールされており、収益課題を自身の努力で根本解決するのは不可能だ。彼らが時給1000円以下での稼働を望めばそれが実現する仕組みが構築されている。単価を下げても配達員が増える限り、これはどこまでも下がり続けるだろう。もちろん現状でも配達員数は増え続けており、UberEats単体で13万人(2022/9現在)を超えるほどだ。以前ほど楽に稼げなくなったにも関わらずである。

当初はギグワークとしての新鮮さ・割の良さ・手軽さが奏功し、色々なタイプの労働層が配達員として参入した。だが実態が広まるにつれ、または稼ぎが減少するにつれて労働層は単色化してきている。こういった事例はフードデリバリーだけのトレンドではない。例えばAmazonを筆頭とする軽貨物配送は社会問題化して久しい。業務委託系の軽貨物事業に少し遅れて登場した業態であるフードデリバリー業だが、同じ流れに追随していると言える。

フードデリバリー業はコロナ禍に乗じて今のところはユーザー数を増やし続けているか、その実態は純粋なユーザー数増加ではない。どちらかと言えば同業種の乱立という結果を招いており、顧客パイの奪い合いに配達員が巻き込まれる形となっている。アプリを並行して立ち上げ待機、別々に端末を操作する等がその典型である。特色を出すために各社は各々で規定を作り、日々業務は煩雑化の一途を辿る。それが細かい手間となって今以上に業務と経費を圧迫するだろう。

この先は最低限度の生活ができる程度(ただしバイク稼働に限る)に配達員の収入はコントロールされ、だが安定化する事も無いだろう。しかしコロナ禍で多くの飲食店や観光業が破綻したように、どんな職種とて先行きはある程度不透明だ。よって完全否定するほどの職種ではなく、逆を言えばこの程度にしかデメリットは存在しない。

デメリットを許容できる人が居る限りにおいて、よって専業としての稼働は可の領域内にある。